治験でオンライン診療を活用する際のよくある質問 〜導入準備編〜
DCT入門Q&A – 治験でオンライン診療を導入する場面
Q1. 病院にて未だオンライン診療システムが入っていない場合にどうすべき?
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- まず、従来の治験システム(EDCなど)と同様に治験専用として使うオンライン診療システムなのか、治験に限らず通常診療で活用する目的もあってのオンライン診療システム導入となるのかを最初に整理することが必要になります。
- 上記で確認した導入ケースに応じて、システム面と、運用面に分けて医療機関と事前に確認が必要です。システム面での導入評価や、運用面で必要な決め事が何かなどを医療機関と協議し、対応が必要と定めた内容について準備を進めていきます。
- システム面については、当該医療機関が治験用や通常診療用のシステム導入を行う際の手順や確認内容を明確にして、準備を進めていきます。
- 運用面については、追加で整備すべき手順書や規定がないかなど取り決め関連の確認事項に加えて、オンライン診療対応時の費用に関する詳細な取り決めも必要になります。
- 医療機関の状況や考えに左右される部分もあり、多様な対応ケースが想定されますので、準備の進め方については経験のあるベンダー等にご相談することをお勧めいたします。
Q2. オンライン診療の施設届を出す必要ある?
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- 治験行為に関しては保険医療外の対応となるため、治験において計画するオンライン診療行為を明確に治験行為のみと区別できる場合は、通常診療における保健医療実施のために必要な施設届の提出は不要と考えられます。
- 通常診療行為も含まれる可能性がある場合について、本記事の執筆時点においては施設基準に係る届出の提出は推奨されているものの保健請求に必須ではなく、届出無しの場合でもコロナ特例下での保健点数であれば請求が可能となっています(事務連絡参照)。
- 但し、あくまで上記はコロナ特例下での時限的な緩和であり、厚生労働省としてはオンライン診療実施にあたって施設基準に係る届出の提出を推奨しています。
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Q3. オンライン診療に必要な端末や、通信回線はどんなもの?
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- 一般的に定められた端末や通信回線の条件はございません。
- 各治験において予定されるオンライン診療計画を踏まえ、安全性評価・有効性評価の質の維持ができるかどうか、医療機関や患者の負担が大きすぎないか、といった観点を吟味して利用する端末や通信回線を定めていく必要があります。
- 過去の事例の中では、端末機器及びWifiルーターの貸与によるオンライン診療実施条件の均一化(有効性評価のバイアス低減への期待、など)を行った試験もあれば、患者自身の携帯端末や医療機関保有のカメラ付きPC、通信環境をそのまま活用して実施する試験もございました。
- 繰り返しとなりますが、オンライン診療の目的、評価への影響度、ユーザーの負担(実現可能性)などの観点を考慮した上で試験ごとに方針を決めていくことが必要であると考えます。
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Q4. 医療機関のSOPやマニュアルは、どう整備する?
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- 医療機関における手順となるため、更新の要否検討を含めて医療機関の責任により対応を進めるべきである一方で、オンライン診療はまだ黎明期であることも踏まえると実際にSOPやマニュアルとして組み込むべき内容は治験ごとの要求事項により多様になることが想定できるため、事前に治験依頼者も含めて医療機関と十分な協議の上で、必要な手順整備の特定と更新対応に努める必要があると考えます。
- オンライン診療の実施にあたり、システム面と運用面の両方についてGCP省令や各種ガイドライン、医療機関固有の手順等を準拠するための具体的な取り決め事項を定めることが必要になります。
- 参考:https://www.miroha.co/resources/#modal_194
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Q5. 診療計画書は被験者ごとに作成する?ICF本体に共通で記載する?
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- 通常診療においてオンライン診療を計画する際には、医師は以下の項目を含む診療計画を作成し、患者と事前に合意することが指針により求められています。
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- オンライン診療で行う具体的な診療内容(疾病名、治療内容等)
- オンライン診療と直接の対面診療、検査の組み合わせに関する事項(頻度 やタイミング等)
- 診療時間に関する事項(予約制等)
- オンライン診療の方法(使用する情報通信機器等)
- オンライン診療を行わないと判断する条件と、条件に該当した場合に直接の対面診療に切り替える旨(情報通信環境の障害等によりオンライン診療を行うことができなくなる場合を含む。)
- 触診等ができないこと等により得られる情報が限られることを踏まえ、患者が診察に対し積極的に協力する必要がある旨
- 急病急変時の対応方針(自らが対応できない疾患等の場合は、対応できる 医療機関の明示)
- 複数の医師がオンライン診療を実施する予定がある場合は、その医師の氏名及びどのような場合にどの医師がオンライン診療を行うかの明示
- 情報漏洩等のリスクを踏まえて、セキュリティリスクに関する責任の範囲及びそのとぎれがないこと等の明示
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- 治験行為について本指針は対象外となりますが、そもそも治験においては前提として未承認行為が含まれることから、より厳しく実施計画の目的やリスク等について同意説明文書などの形で被験者へ説明をし、同意を得た上で対応していくことになります。
- 上記を踏まえ、治験においてオンライン診療を実施する場合の「診療計画」については、上述した指針が求める事項は最低要件として被験者へ明確に提示及び説明をして合意を得るべきと考えます。
- 一方で、これらの説明や合意の形式については指針において詳細には定められていないため、実際には治験で用いる同意説明文書を初め、オンライン診療の計画内容や医療機関の考え等を踏まえて、治験ごとに様々な内容で対応がされている現状です。
- 通常診療においてオンライン診療を計画する際には、医師は以下の項目を含む診療計画を作成し、患者と事前に合意することが指針により求められています。
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Q6. 医療機関向けのトレーニングはどうしたらいい?
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- 治験システムとして利用される場合、他の治験システム(EDC等)と同様に全てのユーザーに対してトレーニングを企画し、記録も含めて実行することが必要です。
- システムユーザーとして登録される医師やスタッフ以外にも、治験の適切な実施の上でシステム内容を理解すべき治験協力者等がいる場合も対象にすべきと考えます。
- 医療機関向けトレーニングの実施者としては、治験依頼者・CROからの実施ケースもあれば、システム提供ベンダーが直接説明を行うケースもあります。
- トレーニング実施状況に基づいたユーザーアカウント管理がなされるべきであり、トレーニングを完了していないユーザーが本番利用をできないようにするなどの運用体制の構築が必要です。
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Q7. 厚労省が発出しているオンライン診療のe-learningは全ての医師が受けるべき?
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- 厚生労働省が提供しているオンライン診療研修(リンク)は、通常診療における「オンライン診療の適切な実施に関する指針」にて医師の受講が義務づけられている研修となります。
- 予定されるオンライン診療が明確に治験行為のみと区分できる場合は受講義務対象にはならないと考えられますが、受診時の緊急対応などのリスクを踏まえると通常診療行為のイレギュラー発生は十分に考えられ、そのような状況含め適切な医療提供(被験者の安全性確保)のために、治験向けオンライン診療の場合も基本的には全ての医師へ当該研修の受講を事前に完了していただくことを推奨いたします。
- 本研修はe-learning形式であり講義部分とテスト部分に分かれていますが、全ての完了には数時間を要するボリュームのある内容となっているため、時間に余裕を持った受講をお勧めいたします。
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Q8. ビデオ通話の事前テストは実施すべき?
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- ビデオ機能に限らず、特に初めて利用するシステムの場合は事前テストによる挙動の確認を強く推奨いたします。
- 具体的な事前テストの方法は利用されるシステムに依存いたしますので、利用されるシステムの管理者(治験依頼者やベンダーなど)へお問い合わせください。
- テスト実施のご留意点として、「オンライン診療を使用される端末・場所・通信(Wifiか携帯キャリア回線か、など)」といった利用条件をできるだけ本番と合わせた状態でのテスト実施をお勧めいたします。
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Q9. オンライン診療導入はどのくらいの準備期間が必要?
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- 治験計画として治験依頼者がオンライン診療の導入を決定してからオンライン診療システムが利用可能となるまでの期間として、弊社の事例からのご参考としてお伝えすると「約2ヶ月〜3ヶ月」程度の準備期間となる試験が多い状況です。
- 実際にご検討の試験において準備に要する期間を確認したい場合は、お話を伺った上で弊社見解をお伝えすることは可能でございますため、お気軽にお問い合わせください。
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