オンライン診療を治験で活用していくために 〜導入編〜

DCT入門

COVID-19の感染拡大をきっかけに、治験や臨床研究でのオンライン診療の活用が日本でも着目されはじめています。

被験者の通院負担を軽減するだけに留まらないオンライン診療の可能性を、この記事では紹介していきます。

 

1. オンライン診療とは

2. オンライン診療は何の役に立つのか

3. ユースケースのご紹介

4. オンライン診療を活用できる場面

5. 実施するにあたって気をつけるべきこと

6. まとめ

 

1.オンライン診療とは

日本でのオンライン診療の状況

厚生労働省の「オンライン診療の適切な実施に関する指針」によると、オンライン診療の定義は以下の通りです。

 

<オンライン診療の定義>

「遠隔医療のうち、医師-患者間において、情報通信機器を通して、患者の診察及び診断を行い診断結果の伝達や処方等の診療行為を、リアルタイムにより行う行為」

 

2015年に実質的に解禁されたオンライン診療は、2020年にはオンライン診療料などの保険点数が制度化され、2021年12月末時点で、全国約1.7万の医療機関がオンライン診療の実施医療機関として登録しています。

 

出典:厚生労働省「令和3年10月~12月の電話診療・オンライン診療の実績の検証の結果」

 

海外でのオンライン診療の状況

COVID-19の感染拡大により、オンライン診療の利用は海外でも急増しています。既に米国では年間で約5,270万人(2020年)¹の利用実績があるようです。DCT(Decentralized Clinical Trials: 分散型治験)の活用が進んでいる米国等の国では、治験においてオンライン診療を利用した新しい試験は2021年で450件²近く実施された、との報告もあります。

 

出典1:ASPE「Medicare Beneficiaries’ Use of Telehealth in 2020:Trends by Beneficiary Characteristics and Location」

出典2:Clinical Trials Arena「Who and what is at the crest of the clinical trial decentralisation wave?」

 

2.オンライン診療は何の役に立つのか

オンライン診療により通院の負担が小さくなれば、被験者にとってメリットは大きいです。

希少疾患の治験などのように治験を受けられる施設が限られているケースでは、通院負担の大きさがネックとなり治験参加を諦めてしまう方もいるでしょう。

例えば、長野から東京まで、治験に参加するために1日かけて通院する必要が毎月出てくれば、仕事や家庭にも支障をきたしかねません。オンライン診療をうまく活用できれば、診察の回数自体は変えずとも、病院への通院頻度を落とすことができます。

 

被験者の通院負担が下がれば、治験そのものへの参加ハードルも下がるでしょう。そこへ更に、サテライト施設での検体採取とスクリーニング検査や、eConsentによる電磁的な同意取得といった別の手法を組み合わせることで、治験中だけではなく、治験参加を検討する際の負担も減らすことができます。結果、より早く被験者を集め、治験を完了することにもつながるでしょう。

 

例として、米国で実施された前立腺がんの試験において、被験者の安全性を確認する方法としてオンライン診療の問診を活用した事例では、被験者に「将来臨床試験に参加しますか」又は「将来 DCT に参加しますか」と質問したところ、回答者全員(13 名)が「強く賛成する(Strongly Agree)」又は「賛成する(Agree)」と回答しました³。オンライン診療を適切に活用できれば、より患者中心の治験の実施にもつながっていくでしょう。

 

出典3:日本製薬工業協会「医療機関への来院に依存しない臨床試験手法の導入及び活用に向けた検討」

 

3.ユースケースのご紹介

オンライン診療の活用シーンとしては、下図の通り3つのパターンがあります。

【仮の説明】図表

各3つのパターンの解説は以下の通りです。

 

D to P型のオンライン診療

被験者ご自身のスマートフォン端末などから治験担当医師とビデオ通話をつなぎ、診察を実施するパターンです。被験者は自宅などのプライバシーが保て、通信環境が安定している場所から接続します。

被験者自身が、ご高齢でITリテラシーが高くない場合や、子どもで自身のスマートフォンを持っていない場合などは、ご家族がサポートすることもあります。

 

D to P with N型のオンライン診療

被験者宅に看護師が訪問し、オンライン診療のサポートを行います。同時に、血液検体及び尿検体の採取や、心電図検査など各種検査を行うことも可能です。

基本的には従来の訪問看護サービスを治験へ応用する形となることから、治験に関するトレーニングへの配慮も必要です。また、広い地域での対応を検討する場合などは複数の訪問看護事業者をまとめたネットワークを構築する必要もあり、そうしたソリューションを提供しているCROなどに訪問看護に関する業務を委託することが現実的でしょう。

 

D to P with D型のオンライン診療

治験を実施している施設の他に、被験者の自宅の近くのかかりつけ医など近隣医療機関と連携するパターンです。

例えば近隣医療機関において、一部治験に関する検査を行い、治験評価については治験実施医療機関側が担うなど、適切な分担を計画することで被験者の通院負担を軽減できる可能性があります。

また、精神疾患等における主観的な有効性評価の際に、なるべくばらつきを少なくするために少数の評価者の医師がビデオ通話を用いる「中央評価」と呼ばれる手法も、この型に該当します。

 

4.オンライン診療を活用できる場面

オンライン診療を活用できる場面は、治験への組入前のプレスクリーニングから治験中の診察、治験期間終了後のフォローアップまで多岐にわたります。例えば以下が挙げられます。

 

<オンライン診療の活用場面>

・プレスクリーニング時に、検査結果をオンラインで教えてもらう
・検体検査が発生しない診察をオンラインで実施する
・検体検査が発生する場合でも、サテライト施設や訪問看護師と連携し、オンライン診療を行う
・治験薬の投与初期などで有害事象のフォローにオンライン診療を追加的に活用する
・治験期間終了後のフォローとして活用する

 

これらから、試験設計に応じて、被験者メリットが大きい場面での活用を検討していくことになります。

 

5.実施するにあたって気をつけるべきこと

オンライン診療を試験に組み込む際には、いくつか気をつけておくべきことがあります。

特に、医療機関での導入が初めての場合、負担が大きくならないようサポートすることも重要です。

治験薬や併用薬配送の手段をどうするか、患者向けの端末を貸与するのかどうか、負担軽減費をどのように設定するのか、なども論点にあがるでしょう。サテライト施設や訪問看護師を活用する場合には、さらに別の論点も出てきます。よくある落とし穴を理解し、回避できるよう準備を進めることが重要です。

 

6.まとめ

試験デザインによりオンライン診療の活用余地は千差万別です。被験者の課題と、製薬企業側の課題の双方を理解しつつ、企業内でのパイロット実施なども検討する必要が出てくるでしょう。治験実施施設側の協力も不可欠です。はじめてのDCT、はじめてのオンライン診療に向けては、是非、経験豊富な製薬企業の事例を参考にしたり、実績あるCROやITソリューションプロバイダーのノウハウを借りることも有益かもしれません。

 

 

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